11:00–19:00 月曜休館・入場無料
会場=京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA ギャラリーB
昨年11月に逝去された長谷川潔先生の追悼展です。
2007年の「bios」と2009年の「Flaneur」の2作品と、学生と教員による小品を展示します。
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
地下鉄東西線「二条城前」駅 下車〈2番出口〉徒歩約3分
市バス「堀川御池」バス停 下車すぐ
〒604-0052 京都市中京区油小路通御池押油小路町239-1
お問合わせ 075-253-1509
http://www.kcua.ac.jp/gallery/
長谷川先生の思い出
初めてお会いしたのは確か2003年の春でしょうか?
はにかみがちでやさしそうな小さな目が印象的でした。
京都嵯峨芸術大学に新設された造形学科メディアアート分野の基礎授業
を担当していただきました。お世話になった学生はメディアデザイン学科
の学生も含め300 名を超えます。担当していただいた基礎授業の他でも
学生達の卒業制作や進級制作の作品制作をずいぶんと助けていただきまし
た。作品制作においては学生達が遭遇するどのような難題に対しても具体
的な方法を示していただきました。また、豊富な技術指導にとどまらず、
作品制作の意義についてのアドバイスは、学生達に芸術作品の制作に携わ
る難しさと奥深さを知る貴重な体験への導きとなりました。
先生とは、授業以外に様々なプロジェクトに協力していただきました。
中でも、2005年の京友禅染型彫刻のハイビジョンアーカイブ映像の製
作では、型紙彫刻師の工房で、指先のとても細かく素早い技を美しい映像
に記録していただきました。まだ、ハイビジョンの撮影や編集が容易でな
かった頃のことです。伝統工芸師の職人技への長谷川先生の共感が、緊張
感とともにふしぎな静けさを生み出していました。また2004 ~2009 年
の島津製作所航空機器事業部との透過型HMDの共同研究では、小さな透
過型HMDの画像に対して、どのような映像が有効であるかをともに模索
しました。2009年には「flaneur」として研究成果を展示しました。京都近
隣の森や水辺を撮影していただきました。限られた予算と時間の中で吹田
先生とともに数々の美しい映像を撮っていただきました。
そして、2007 年10 月に開催された、JR京都駅での映像インスタレー
ション作品「bios」の制作があります。「bios」は、京都嵯峨芸術大学が、
嵯峨御流いけばな展「ニッポンノケシキ」に参加協力する作品として企画
されました。京都駅北側の広場に生け花と映像をともに展示するインスタ
レーションとして計画され、秋の観光シーズンで多くの人々が利用する駅
前広場に3日間にわたり展示する大規模なものでした。大型の生け花の周
りに10台の50インチプラズマモニターを半円状に並べ、モニターには花々
のマクロ撮影した映像を映し出します。花の種類がわからない程に接写す
ることをお願いしたところ、当時のビデオレンズでは適当なレンズが無く、
長谷川先生のアドバイスで、特別にビデオ用に改造した海外のシネレンズ
を使用することになりました。撮影は大学のスタジをで助手を務めた卒業
生の五十嵐君とともに昼夜を分たず長時間行われました。肉眼では気づく
ことのなかった小さな虫の動きをモニターで見つけて、皆で驚いたのを懐
かしく思い出します。思い返せば、長谷川先生を頼みにしていたのは学生
ばかりではなかったのです。先生は、常に最新の技術とその限界を熟知し
ていました。そしてそれらを芸術へと織り上げてゆくその過程を愉しんで
いたように思います。
bios は、ギリシア語のβίοςから取られています。生命の意味を持ちま
す。花の美しさの中に隠れた命そのものを感じることが出来ればと考えた
からです。
長谷川先生からご病気をお聞きしたのは2013年の春ですが、初めてお
見舞いした時のお元気な様子が思い出されます。夏を過ぎて、ずいぶんと
おやせになり体力的にも厳しい中、力の続く限り、最期まで授業を続けら
れ、学生達をしっかりと導いて下さいました。その時の凛とした力強い目
を私は忘れることはありません。